
日々の仕事や暮らし、SNS、AIなど溢れる情報に心身が疲れたとき、あなたはどんな方法でリフレッシュしているだろうか。ときには静かに坐禅して、いまここにある自分を見つめるのもいい。マインドフルネスの実践として、坐禅や瞑想は海外でも盛んに行われているとか。坐禅の姿勢を安定させるため、禅寺では坐禅蒲団、坐蒲(ざふ)を使う。その伝統の形や製法は残しつつ、現代の暮らしに合わせてリデザインしたのが、坐禅や瞑想用のクッション「ZAF」シリーズだ。手がけるのは富山県高岡市にあるサカエ金襴株式会社。高岡銅器で知られるものづくりのまちで、創業以来、金襴など伝統の織物を使った布製仏具を製造、販売する。坐禅蒲団のほか、家庭や寺院用のりん布団や座布団、袈裟、お堂内の装飾品など、全国の問屋から注文を受け頼りにされる存在だ。代表取締役の竹澤賢人さんは、伝統の形が持つ大切な意味を、つないでいきたいと考えている。

サカエ金襴は約880種類もの金襴の在庫量を誇り、世界最大級のアーカイブをWebで公開。顧客も若手社員もどんな織物があるかをすぐに把握できるようになった。その貴重な伝統の織物を使い、僧侶の袈裟や寺院の装飾品のほか、りん布団も家庭用から寺院用まで、多彩な紋様とサイズの製品を手がける。竹澤さんは語る。「りん布団は15枚の正方形の生地をサッカーボールのように斜めに縫い合わせ、布が互いに引っ張り合い、重いものをのせても裂けることがありません。仏具のつくり方は驚くほど合理的です」。それは坐禅蒲団も同じで、丸い基本形のZAFは、元々の製法を変えていない。側面には「ひだ」があり、座ると広がって、その人に合った適切な骨盤の角度に導いてくれると言う。「坐禅蒲団は江戸時代からあると言われていて、この形や構造は完成されたものだと思っています。2600年の仏教の歴史の中で磨かれた形をいま変えるのではなく、その意味や必然性を理解して将来につないでいくのが、当社のものづくりのモットーです」。

竹澤さんは京都の問屋での修行を経て、2016年に創業者である母の恵子さんのもとで仕事を始めた。「マインドフルネスがテレビ番組で特集されるとブームになり、2017年頃、仏壇屋さんのネット販売で坐禅蒲団が右肩上がりで売れるようになりました。一方、僕は仕事での行き詰まりから、心も体も疲弊してしまって。自社で坐禅蒲団をつくっているのだから、一度、坐禅を体験してみようと富山市の最勝寺さんを訪ねました。40分座って、15分歩く禅をして、また、40分座って。初めての坐禅で体は大変でしたが、そのあと、いままでの不安が大したことがなく思えて、頭がスッキリしたんです。世の中にマインドフルネスが広まってきたことと僕自身の課題があって、2018年にはZAFを立ち上げました」。デザインは株式会社ROLEのデザイナー羽田純さんに依頼。タグのデザインが印象的だ。「曹洞宗の坐禅は壁に向かってするので、後ろから見て誰か分かるようにネームの部分は元からあるもの。それを新たなブランドタグとして羽田さんにデザインしていただきました」。竹澤さんがZAFにふさわしい素材を選び、羽田さんは新しい色を提案していった。


以来、これまでにないカラフルな生地やニット素材、スポーツ用の生地を使ったZAF SPORTS、抗菌や耐熱素材を使ったサウナ用のZAF SAUNAも発売し、サウナ用は一番の人気商品に。サウナでの坐禅、「サ禅」のイベントもプロデュースするなど、サウナに着目したのも竹澤さんの経験からだ。「サウナが好きなのですが、座るときに姿勢が良くない方が多いのです。姿勢は自律神経にも影響すると言われますから、ZAFを活かせたらと」。サウナ用はコンパクトなサイズで狭い空間でも使え、持ち運びも楽で枕にもなる。サウナと禅の組み合わせで心身が「ととのう」という異色のコラボは、特に若い世代の共感を得ている。そして、ZAFシリーズはホテルやさまざまな施設への導入が進む。今後、親子で瞑想ができるよう、小学生向けの商品を開発中だ。「海外では教育現場で瞑想を取り入れているところも多いんです。朝5分でも親子で瞑想する習慣があれば、姿勢や集中力も良くなるのではと。それがあたりまえになれば、日本にユニコーン企業がたくさん生まれる未来もあるんじゃないかと考えています」。仏教の歴史や伝統の技を礎に、ZAFによる心と体をととのえるストーリーは、さらに次の世代へとつながっていきそうだ。

Founded in 1983 in Takaoka, Toyama Prefecture, Sakae Kinran holds around 880 varieties of kinran gold brocade and offers one of the world’s largest online archives. Drawing on this precious traditional textile, it produces items ranging from monks’ kesa robes and temple ornaments to rin singing bowl cushions for home and temple use. Inspired by the spread of mindfulness and his own zazen practice, President Masato Takezawa redesigned the zazen cushion, the style of which dates from the Edo era, to launch ZAF as a meditation cushion brand. “Rather than altering a form refined over 2,600 years of Buddhist history, our credo is to understand its meaning and intent to carry it forward,” he says. Designer Jun Haneda of Studio Role is involved in the company’s design and product development. The lineup now includes ZAF SPORTS for athletic use and ZAF SAUNA, made with antibacterial and heat-resistant materials, which resonates with younger consumers and is the brand’s top seller. The ZAF series is used in hotels and various facilities, and a new model for elementary school students is being developed to encourage parent-child meditation. Grounded in Buddhist tradition and craftsmanship, the ZAF story is poised to connect with the next generation.