空間をやわらかくするインテリアブランド「LUFU」。そのプロダクトの一つである「YULA」は、へちまを素材に軽やかに風に揺れるオブジェ。富山県射水市で40年間、農薬を使わずへちまを栽培し、多彩な商品を開発・販売してきた有限会社へちま産業と、デザイナーの進藤篤さんによる新しい試みだ。自然なへちまの色や素材の風合いと真鍮の組み合わせは、温かくも品のある佇まい。これまで主に、たわしや化粧品などに使われてきた、へちまという素材への概念を心地よく編みなおすようなデザインだ。へちま産業では毎年約2万本のたわしと、15トンのへちま水を生産し、その規模は全国でもトップクラス。同社のへちまはやわらかく、質が高いという。日本で使われているへちま素材の多くは中国産で、繊維が詰まり硬い。「LUFU」は、富山のへちまだからこそ生まれたインテリアオブジェと言えそう。素材の質の高さの秘密とは。瀧田秀成社長に畑を見せていただいた。
畑ではビニールハウスの骨組みを使った棚を大きな葉やツタが覆い、黄色い花が咲いていた。40年来、農薬や化学肥料、除草剤は使わず草刈機で草を刈り、肥料には乳牛の糞の堆肥を。「夏でも水やりは必要なく、北アルプスの立山連峰の雪解け水や庄川の伏流水が自然な湿り気となって畑を潤します。根の病気予防にさつまいもも一緒に植えています」。へちまは、小さいうちは実を食べることができ、黄色に完熟したら皮を剥いで繊維はたわしに。茎から採るへちま水は飲料や化粧水に。葉もお茶や石鹸に、種はオイルや翌年の植え付けにと、用途はじつに多彩だ。「へちま栽培のきっかけは、約40年前に旧大島町が町おこしとして、へちまの特産化を進め、父もほかの農家さんと共に、へちま生産と加工品の製造・販売を始めたことから。まだ、6次化という言葉もなく、当時は珍しかった新しい農業のスタイルや、無農薬、有機栽培などの農法に魅力を感じ、私もへちまの可能性にかけてみようと、大学卒業後に取り組み始めました」。
従来、へちま産業が手がけてきた製品は日用雑貨と化粧品など、生活用品がほとんどだった。「以前、へちまのランプシェードを参考商品としてつくったことがあり、いつか、新しい形で商品化したいと考えていました。そして、2019年に富山県総合デザインセンターによるマッチングでデザイナーの進藤さんと出会うことができました。進藤さんはこれまでのへちまの活用法を見直して、新たなインテリアオブジェをつくろうと、各地のへちまを調べてみたそうです。その中でも私たちのへちまの繊維の細かさ、厚み、やわらかさなどが、想定していたデザインにちょうどいいとのことでした。進藤さんには何度も富山に来て、畑や製造工程を見ていただき、たくさんのデザインスケッチを描いてもらい試作を重ねました。
そんな試行錯誤の中で新しく生まれたブランドが『LUFU』です。その中の第一弾の商品、『YULA』の製造工程は、秋に収穫して天日干ししたへちまをカッターで割いて開き、ローラーで平らにしたものを型抜きします。表裏の2枚を合わせてミシン掛けして、へちまの部分は出来上がります。美しく削り出された真鍮の台は底が丸くなっていて、自然に風に揺れるようになっています」。
2022年には、富山県立山町の隈研吾さん設計の複合施設「ヘルジアン・ウッド」で「LUFU」のローンチの展示会が開催され、大きな反響があった。自然素材だけに「YULA」は、一枚ずつ違った個性があるのもいい。アロマスプレーを吹き付けることで、香りを楽しめるフレグランススタンドにも。へちまは速乾性や通気性があり、本体を水に浸して窓辺に置くと、気化熱によって自然な涼しさも楽しめるとか。「現在、『YULA』はネットでの個人客への販売が主ですが、今後はホテルや宿泊施設でも使っていただけるといいですね。新作としてバスマットも試作中で、両面で何本ものへちまを使った商品に。中には製造過程で出るへちまの端材を粉砕したものを入れて厚みも出す予定です。さらにアイテムを増やしていく予定で、例えば、ホテルの一室を『LUFU』の商品でコーディネートする機会も実現できればと思います」。瀧田社長自身も農作業に勤しみ、製品づくりに携わる。大切にしているのは自然を身近に感じてもらえる、環境や人に大きな負荷をかけない農業とものづくり。へちまを通して、ユニークでサステナブルな、つぎの可能性が見えてくる。
LUFU is an interior brand with a subtle ambiance. YULA, one of its products, is an object made from loofah that gently sways in the wind. It can serve as a fragrance diffuser if used with an aroma spray, or you can enjoy the natural coolness from evaporation by soaking it in water and placing it near a window. This is an innovative new collaboration between the designer Atsushi Shindo and Hechima Sangyo Ltd., a company which has grown loofah without farm chemicals for 40 years in Imizu City, Toyama Prefecture, making and selling diverse products from these plants. The design pleasantly reinterprets the concept of loofah as a material, which has mostly been used for scrubbing brushes or beauty products up to now. Shindo visited Toyama numerous times to make design sketches and try out several prototypes with the company. Hechima Sangyo produces 20,000 scrubbing brushes and 15 tons of loofah water each year, putting it in the top rank of this industry nationwide. Its loofahs are soft and of the highest quality. CEO Shusei Takida intends to increase the range of items, looking toward their use in hotels and elsewhere. His vision shows a unique and sustainable future potential for agriculture and manufacturing gentle both for people and the environment.