富山プロダクツ

株式会社 リッチェル

PROFILE
1956年にシルバー樹脂工業所として創業。1960年にシルバー樹脂工業株式会社として法人化。プラスチック製品の企画・製造・販売で、高度経済成長期において、新しいライフスタイルを提案。1991年には、社名を株式会社リッチェルに変更。RichとWellを組み合わせた造語で、Richには高級感や生活のゆとり、Wellには高品質や信頼感という意味が込められた。プラスチック素材や他素材と組み合わせた幅広い生活用品を、富山本社のデザイン室で開発。その商品数は4,000近くにものぼり、国内外の拠点で製造・販売され人気となっている。

立山連峰を望む田園風景のなかに、
デザイン集団はいた。

リッチェルブランドは、暮らしのあらゆる場面に息づく

富山県富山市水橋。立山連峰を望むのどかな田園風景のなかに、来年で創業60周年を迎える株式会社リッチェルの本社がある。リッチェルの商品は、私たちの暮らしのあらゆる場面に息づき、普段、そうと気づかずに、あたり前にリッチェルブランドを使っている人も多いはずだ。ベビーカー・食器などのベビー用品、バス・キッチン・ダイニングなどの家庭用品、介護のためのライフケア用品、ケージ・キャリーといったペット用品、プランターなどの園芸用品、エクステリア用品など実に多彩。自社ブランドの企画からデザイン、設計、製造、販売までを社内で一貫して手がけているのが同社の特長だ。
また、富山県総合デザインセンターの富山プロダクツに選定されている蓮池槇郎氏デザインの「DESUS」シリーズや、昨年グッドデザイン賞を受賞したペット用のキャリーケースなど、デザインと機能性が一体となったものづくりで高い評価を受けている。同社のベビー用品はジャパンブランドへの信頼性もあり、中国、アジア圏などで人気が高い。また、近年ではペット用品の販売が特に伸びていると言う。

あたらしいデザインには、必ずあたらしい機能を

デザイン室の三輪久夫さんはプロダクトデザイナーであり、高度な技術を持った設計のプロフェッショナルだ。
「見た目のあたらしさのみを求めるデザインではなく、これまでにない使い方を提案する新機能を盛り込み、カタチに反映していきたい」と語る。グッドデザイン賞を受賞したペット用キャリーケースは「キャンピングキャリー」と名づけられ、折り畳んでスリムに収納ができる。ほかにも、犬や猫が飼い主の留守中に楽に水を飲むことができる「ウォーターディッシュ」。浴室での水切りをよくする「Karali」シリーズなど、あたらしい使い方の提案がデザインに盛り込まれているのがリッチェルらしさだ。

豊かな自然と、ゆとりある日々が育てるデザイン

では、富山でデザインすることのメリットとはなんだろう。デザイン室長の高松桂子さんは次のように語る。「オンとオフのバランスの良さですね。日用品をつくっているメーカーですから、やはりプライベートが大事。家庭生活で充実した時間を過ごせば、その分、仕事にも集中できます」大阪からUターンして入社した三輪さんも「富山では土地にも、生活の時間にもゆとりがあって、当社の園芸用品をいくつも使ってみたり、畑を耕して野菜を育てたり。それをまた、次の商品づくりに反映することができるんです」
リッチェル本社自体も、立山連峰を望む環境のなかにある。刻々と表情を変える北アルプスや田園風景。雄大な自然とともにある日々が、社内ののびのびとした雰囲気、ゆとりあるものづくりにつながっているのではないだろうか。

人と人が、最後までこだわってものづくりができる環境がある

リッチェルの商品は実に多彩だが、どの商品にも共通して人の温もり、やさしさがあると思う。では、どうして、これほど多品種の商品デザインと製造が可能なのか。高松室長にお話を伺った。「現在、デザイン室はプロダクトデザイナー、製品設計、ビジュアルデザイナー、カラーデザイナー、取扱説明書の制作担当、外装やCIの管理担当など、それぞれのグループが集まって構成されています。
デザイン室で取り組むテーマは年間で約200にもなりますが、共通するのは、ユーザーにとって豊かな生活、メリットが得られるものづくり。そして付加価値があるものをつくること。当社が創業以来変わらず大切にしてきたのは、何よりオリジナリティを重視したデザインなのです」
リッチェルではデザイナーが設計まで担当するため、製造まで考えたリアルでスピーディなものづくりが可能だ。「デザイナーとしてうれしいのは、最後まで自分のこだわりを商品に反映できること。デザイン室ではディスカッションがとても活発で、人と人のつながり、働きがいを大事にする社風が、ものづくりにも、とてもよく反映されていると思います」

リッチェルだから買いたいブランドづくりへ

リッチェルでは2013年に「ブランドプロジェクト」を発足。CIの導入から約30年が経ち、ふたたび、リッチェルというブランドを捉え直す取り組みが始まっている。高松室長は次のように思いを込める。
「いまの売上をつくるという目的のためだけではなくて、将来を見越したあるべき姿のためにデザインを活用すること。まだまだリッチェルブランドは知られていないところがあり、最終的な目標は、多くの方にリッチェルだから買おうと思っていただけるようなブランドづくりを実現することです」
世界に唯一のアイデアや新機能をデザインに盛り込みながら、リッチェルだから買いたくなるブランドの確立に向けて。その取り組みとさらなる進化に、これからも注目していきたい。