富山プロダクツ

美術木箱うらた

PROFILE
美術木箱うらたは、富山県高岡市で2002年に設立。現代表の浦田健志さんは2代目としてその高度な技を受け継ぐ。妻の亜希穂さんら家族4人で工房を営み、国宝や様々な作家の作品をおさめる桐箱の製作のほか、自社のオリジナルブランドKIRIFTを展開。材料の吟味から仕上げまで、妥協のないものづくりに努め、顧客にとって、一生ものの価値のあるブランドに育てたいと思いを込める。JETROの「TAKUMI NEXT 2021」採択企業となり、海外への販路開拓も始まる。KIRIFTシリーズはオンラインショップのほか、D&DEPARTMENT TOYAMAなどで販売中。

和のイメージを一新する、桐のキッチンツール。

桐箱づくりの技で、自社ブランドを。

高岡銅器、高岡漆器などに代表される、ものづくりのまち富山県高岡市で桐箱製造業を営む「美術木箱うらた」。江戸時代から続く指物師の家系に生まれた浦田実さんが、京都で修行後、実家の桐箱屋を経て独立創業。現代表の浦田健志さんは2代目として、妻の亜希穂さんら家族とともに工房を営む。もともと同社で手がける桐箱は、金工、陶芸、ガラス、井波彫刻、掛け軸など、主に美術工芸品用が多く、作家たちから注文を受けオーダーメイドで制作してきた。素材となる桐は、調湿、防腐、防虫効果に優れていてカビが生えにくく、世界の中でも特に湿気が多い日本の気候風土の中で、大切なものや着物を長く保管しておくために適した素材として古くから用いられている。しかし、最近では安価な生活道具が気軽に手に入るようになり、高級品を収集する人も減少。そこで、「桐箱づくりの技術と機能性を生かして、桐箱がメインとなるものづくりをしたいと考えました」と亜希穂さんは語る。

手探りで始めた、独自のものづくり

BtoBからBtoCのものづくりへ向け、最初に考えたのがRICE STOCKERだ。「桐箱で5kgの米びつを作ろうと。実は桐の米びつは、たくさん売られていますが、私が欲しいものが全くなかったんです」と話す亜希穂さん。以前から健志さんに、普段の暮らしの中で使える桐箱や木の道具をリクエストして作ってもらっていたとか。「例えば、コーヒー豆を常温で美しく保存でき、キャンプでも映える可愛い桐箱など、何でも形にしてくれました」しかし、いざ、RICE STOCKERの商品化にあたって、依頼できるデザイナーや販売先も分からず悩んでいた。そこでインテリアライフスタイル展に出かけると、高岡のものづくりの先輩から、商工会議所に入ることや富山県総合デザインセンターに相談してはといったアドバイスを受けた。そこで、富山プロダクツ選定事業についても知ることに。その後、金融機関の紹介で出展したビジネスマッチングフェアを通じて出会ったのが金沢のデザイナー、DOING代表取締役の橋田望生さんだった。

インテリアと調和する、KIRIFTのモダンな存在感

浦田さん夫妻とデザイナーの橋田さんは、試行錯誤しながら、女性の手にも馴染むように、滑らかで美しい曲面を持つプロダクトを開発。ブランド名はKIRIFTと名づけた。「本当に自分が欲しいもの、自分の小さな手でも使いやすいものを基本に、桐の持つ和のイメージを一新したかった」と話す亜希穂さん。徹底した使う人目線で、健志さんと橋田さんには自身の希望や思いをまっすぐに伝えていったと振り返る。

RICE STOCKERはキッチンの主役ではなく、ほかの家電やインテリアとも調和するデザインとなっている。塗料は使わず蜜蝋で仕上げた、自然な木目が美しい。桐のかたまりとしての存在感はあるが、軽い素材のため、中身を入れても持ちやすい。蓋の持ち手は桐の佇まいを生かし、彫刻刀で削り出したような意匠となった。驚くことに、この蓋はどの方向からでもすーっと滑らかに閉じられ、しかも、密閉性が高い。茶色のタイプは焼桐という表面を焼く加工が施され、濡れた手で触っても、跡や汚れが目立ちにくい利点がある。そして、丸みを帯びた4辺の曲面は、手で繊細に削り調整したもの。随所に桐箱づくりの高い技術が活かされている。

手間をかけて、一生ものの品を

 

「原材料については、食品をストックするため安心な国産桐にこだわり、食品衛生法に適合した接着剤を使用しています。塗料も使わず蜜蝋や焼桐の技で仕上げ、使う人や環境に配慮した製品づくりを心がけています」と話す浦田さん夫妻。国産桐は原木で買い付け、製材したのち自社でアク抜きと乾燥を繰り返すなど、安心できる素材づくりのための手間を惜しまない。また、商品の修繕、メンテナンスなどのアフターケアも行なっている。材料づくりから販売まで一貫した生産体制を取り、長く使えるもので暮らしの土台となる環境保全に努めたいと語る。KIRIFTでは、米びつのRICE STOCKERのほかに、コーヒー豆用のCOFFEE STOCKER、茶葉、ハーブ、パスタなど様々な乾物を入れられる三角形のLIFE STOCKERも商品化され、首都圏でも人気となっている。さらに、次の新商品も開発中だ。「桐はとても手間がかかり、KIRIFTは決して安い商品ではありません。でも、蜜蝋などで手入れすれば、経年変化による味わいを楽しめます。一つ一つのものを大事にされる方に、一生ものとなるような価値ある商品を今後もお届けしていきたい」と浦田さん夫妻は熱く語る。

 

Bijutsu-Kibako Urata manufactures boxes made of paulownia wood in Takaoka City, Toyama Prefecture, a city of manufacturing. Minoru Urata, born into a family of joiners active from the Edo period, started this business in 2002 after an apprenticeship in Kyoto. Kenji Urata is now the second president, running the workshop together with his wife Akiho and family. In addition to crafting paulownia boxes to hold national treasures or the works of various authors, they are also developing an original brand called KIRIFT. Paulownia wood has excellent humidity control, rot prevention, and insect repelling properties. Mold-resistant, it is excellent for preserving important items in the highly humid climate of Japan. However, in recent years, people tend not to collect luxury articles. In response to this, Bijutsu-Kibako Urata used their skillful techniques in crafting paulownia boxes and their functionality to create the RICE STOCKER, with superb curves to blend into modern interiors. KIRIFT now has the COFFEE STOCKER and the triangular LIFE STOCKER for storing various dry goods, gaining popularity through online sales to people in Tokyo. As these products are for storing food, the company buys dependable raw Japanese paulownia timber as lumber to process at its own workshop. “We don’t compromise anywhere, from the initial inspection to the finishing touches. We want our customers to treasure these boxes their entire lives,” say Kenji and Akiho.